鍋倉渓(なべくらけい)は神野山の山腹にあり、大小の黒色の岩々が幅平均25m、長さ約650mにわたりまるで溶岩の流れのような景観を造りだしています。
この附近の大和高原地域一帯は、花崗岩質で形成されていますが、その中でこの神野山だけは角閃斑糲岩(※かくせんせきはんれいがん)という深成岩(火成岩の一種)でできており、岩質が非常に堅いために侵蝕にたえてこの山容ができたものと考えられています。
伊賀の天狗と神野山の天狗がけんかをして投げあった岩だという伝説や、火山の溶岩が流れ出して固ったものだなどいろいろな俗説はありますが、この成因は前地質時代に山の表面が風化して、次第に細かく土壌化する際に、前記の角閃斑糲岩のとくに堅い部分が風化にたえて岩石のまま残り、当時の谷底に自然に移動して集まったものです。
その後地形の変化に伴って現在のような浅い谷となり岩石が昔の谷にそのまま長い列をなして堆積したものと考えられます。
そして流れくだる水は一層谷底を深く侵蝕して岩石の下をくぐり全くの伏流となったものといわれています。
「なべくら」の名称の由来は、 堆積した岩のそれぞれが黒くすすけた色をしており鍋の底を連想させるところからこのように呼ばれるようになったと言い伝えられています。
毎年8月上旬から中旬にかけてライトアップを行っており、光に照らされて、神秘的な姿を見せています。